知らない男が枕もとに立っている。
「お迎えにあがりました」
ぼんやりした頭で僕は考える。
この男は誰だったろうか?
男はやさしく微笑む
「あと15分です」
どうやら僕に残された時間はあと15分らしい。
窓の外の太陽は既に高く、
ベランダには白いタオルが揺れている。
伝えるべきことは、伝えたような気もするし
これまで伝えられなかったことを
あと15分で誰かに伝えられるだろうか?
大切な人がいないわけではないけれど
大切な人が、同じように
僕を大切に思っているかどうか?
そんなことを今、確認したいのではない。
まぁ、皆きっと楽しくやっていくのだろう。
窓の外に一筋のひこうき雲が横切る。
「時間です」男は微笑む。
「最後に」と、僕は問いかける。
「あの時、僕が違う選択をしていたとしたら?」
僕には一つだけ
岐路と思える出来事があった。
例えば僕に、違う人生の選択肢があったのなら?
「結果は同じですよ」
男はもう一度微笑む。
「では、参りましょうか」
僕は目を瞑る。
足元から熱を帯びはじめ、
頭の中は白い闇に覆われていく。
窓の外の太陽は更に高く、
ベランダには白いタオルが揺れている。
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